大人女子白書 vol.5:男女の友情を成立させるなら、色恋沙汰はご法度だよね

主人公 千佳。24歳。
たまプラーザの美容室に勤める。趣味は雑貨屋さん巡りと部屋の模様替え。職場の先輩に片想い中。

「肉が食いたい」

そうLINEにメッセージを入れたユウジのリクエストに応えて、今日の集合場所は渋谷の牛角に決定。

高校時代からの親友である菜々子と、その幼馴染のユウジとは月2で飲みに行く仲なのだ。肩肘張らずにグダグダ朝までつるめるトモダチって、社会人になったからこそ、その存在がどんなに有り難いか良くわかる。

お店の戸をくぐり、カルビの脂が焦げる匂いを嗅いだ瞬間、3人のお腹がぐぅと鳴った。どうやら私たちは腹の虫まで息がぴったりだ。

席に着いたらいつものように「とりあえず、生3つ!」と菜々子。

それから、シーザーサラダ(私)、人気5種盛り(菜々子)、牛タン塩(ユウジ)、野菜の盛り合わせ(私)、追加で牛角カルビ(ユウジ)と海鮮盛り合わせ(私。「肉屋に来て魚介を食うな、肉を食え」と横槍を入れるユウジは無視した)。

ひと通りお腹も膨れたところで満足気にテーブルを見やると、いつの間にか空のグラスが所狭しと並んでいた。だいぶアルコールも回った深夜11時。菜々子が枝豆をつまみながら触れてほしくない話題をふってくる。

「千佳、そういえば例のセンパイとはその後進展あったの〜?」

「うっ。なにも全く・・・最近シフトが被んなくて会えてすらないし。」

「うえ〜。もっと積極的になんなさいよ〜、もぉ〜。」

「それどころか。いつも頼んでるカットモデルの子と付き合ってるってウワサ聞いちゃったからな。ちょっと厳しいかも・・・」

「え!? そうなの?」

センパイの話題になると、だいたい“カモクな人”になるユウジが珍しく話に乗ってくる。

「人の不幸を嬉しそうに笑うんじゃない! 馬鹿者!!」

カチンときながら半分はふざけて、私はユウジが大事に取っておいた最後のカルビを奪い取った。

いつからだったろう?

なんとなーくだけど、ユウジから好意を寄せられているっていうのは気づいていた。菜々子もきっと気づいている。

そして、そのずっとずっと前から。

菜々子はユウジのことを好きなのだ。

早朝の道玄坂。3人並んでタラタラと坂を下る。正面から差す朝陽が深酒でむくんだ目に沁みる。街路樹の緑がキラキラと輝き、若葉の一枚一枚が今日が間違いなく良い日になると告げているようだ。爽やかな季節の朝は本当に美しい。

<今日は休みだ〜。帰ってゆっくり寝よ>

渋谷駅前のスクランブル交差点まで辿り着くと、通り向こうにある駅の上の大きな看板広告が目についた。笑顔の女の子と「いのち短し恋せよオトメ♥」のキャッチコピー(どうやら脱毛の広告らしい)。

そのコピーから目を離せないまま、すぐ隣にいる菜々子を素肌で感じた。

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